指虫

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友人の家に「出る」らしい。
「どんなの?」
「指」
「指?」
「親指から小指まで5本。真夜中に箪笥の下をがさごそ虫みたいにうろついてた…」
手指がシャクトリムシのように床を這っているのを想像した。
指の腹で踏ん張り、第二関節を高く上げ、後ろの基節骨を引き付けて進む。また踏ん張って、持ち上げて、引きつけ、繰り返し…
「…キモそうだけど見てみたい」
「え、見たい?」
「見たい」
「いいけど…」

その日の深夜。
家に泊めてもらい、布団の中でウトウトしていたが、唐突にハッと覚醒した。
何かいる。僅かにだが、何かが動く音がする。
隣の布団の友人も気付いたらしくこちらを向いてうなずき、箪笥の方を指差した。
暗闇の中、目を凝らす。小さな何かがうごめいている。友人が電気を点けた。
思ったより小さく丸っこい何か達。一瞬、分からなかった。けど、すぐ納得した。

ああ、指って手だけにあるもんじゃなかったな。
ホラー
公開:19/09/27 23:09
ホラー

PURIN

超ド級の素人です。他サイト様でも書かせていただいています。
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