池の鯉

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「その手がありましたか・・・」
九段名人の小野は、駒を進める手を止めて、着物の膝あたりを掴んだ。

小野の自陣の玉を、三鷹の竜と桂馬が完結に詰めていた。

三鷹は顎をさする。

「三鷹さんはやっぱりお強いですね。これで九連敗だ。もう、私もそろそろ潮時か・・・」

小野は、疲れた表情で立ち上がった。

三鷹は、将棋界屈指の風雲児と言われ、大概のプロは三鷹の完璧な布石に打ち負かされていた。

小野は、縁側に腰をかけ、池の鯉を眺めた。

赤色、白色の鯉が悠悠自適に池の中を泳いでいる。
三鷹は、大敗した姿を池の水面に映す自信が全くなかった。
その他
公開:19/09/27 23:07

神代博志( グスク )









 

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