チューチューした後

スーパーモデルの投稿写真から火がついた昆虫スムージー。
今日も女子たちが我先に新種のスムージーフォトをインセクトラムに上げている。
つやつやと照る甲殻。たおやかな触角。丸っこく愛らしいフォルム。
苺やキウイの断面と交互に重ねたり、
カシスやベリーの粒粒に埋めたり、
スムージーの層に翅を斜め挿ししたり
組み合わせは無限大。
やっと自分の番が来て、全部盛を受け取ると、角度と背景を変えて10連写。
たいていの子は写真を上げると、ストローでスムージーだけ虫虫と吸い上げ、
虫の部分はポイ捨てする。
やがて、瓶、缶以外に、虫用のゴミ箱が設けられるようになった。


とある郊外。
虫ゴミを投棄したトラックが去って、虫塚がまた少し広がる。

月の夜、キキィ、キィと塚が軋んだ。
しょりしょり、じょりじょり、表面が泡立ってくる。

膨れ上がる灰色の異形から熟れた果実のような濃厚な香りがした。