たとえひとりぼっちでも

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春の息吹が遠い、2月の病室。
まだ歩道の隅に融け残った雪に、制服のスカートとスニーカーを濡らしながら、君は来てくれた。部活を休んで、クラスの誰よりも先に。

真っ白な相部屋にオレンジの西陽が低く射し込み、君とパジャマ姿の僕だけがいる。
今は、どんな話をしたら良いんだろう。ベッドに腰掛け、うつむき加減の僕にそっと差し出された…

ふと見ると小首を傾げ、はにかんでいるいつもの君の微笑み。
差し出された手には、文庫本がひとつ。
細めた君の目を見つめて、それを受け取った。ありがとう…僕はこの一言がどうしても言えないまま。
もうすぐ会えなくなるのに。廊下の後ろ姿、さようならの声も掛けられずに。

『名探偵はひとりぼっち』…君が読んで、僕が貰った本。僕にとっては、君の身代わり。

僕は、ひとりぼっちでも君を探しに行こう。元気になったら、きっと会いに訪れる。
もっと北の方へと転校した君に。いつか必ず…。
青春
公開:19/09/23 19:21
更新:19/09/25 19:15
中学生 思い出 赤川次郎

白ねこのため息( あちらこちらにいます )

2019年9月14日から参加いたしました。
しみじみとした後味や不思議な余韻が残る作品を目指しています。
どうぞ宜しく…。
ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。

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現在、資格取得(英検1級など)の勉強中のため、投稿ペースが落ちていますが、
これからも引き続きご愛顧のほど、何とぞ宜しくお願いいたします。ペコリ。
 

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