ロケットと長者

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実験を見まもる大勢の研究者から、歓声が上がった。実験は成功だ。

東亜工業の社長、キモ・ワルイル氏は、誇らしげに言った。「地球の重力を部分的に曲げる装置“スーパー・オカンデカン”の完成だ」

横の副社長のソン・スルゾ氏も言う。「重力が弱まり、移動や歩行の労力が軽減します」
キモ氏は隣接する発射台を見やる。「そして、ロケットもミサイルも、低重力なので自由に打上げる事ができる。明日から、再実験だ!」

さて翌日。現場を訪れたキモ氏や一同は目を丸くした。

なんと、重力変化のための設備“スーパー・オカンデカン”も、ロケットの発射台も、全て跡形もなく消え去っている。あとには、広い平野がガランと残っていた。

呆然とするキモ社長の横で、ソン副社長は日本の昔話を思い出していた。

ある長者が田植えの時間を延ばそうと、沈む夕日を扇で元に戻させ、仕事を終えた。翌日、水田は一面の水たまりに戻っていた、とさ。
SF
公開:19/09/23 15:40
更新:19/09/23 23:59

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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