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秋も次第に深まり、今年も秋海棠(しゅうかいどう)が咲き始めた。
釣りと私は呼んでいる。一斉に長く伸びた花柄が、横から見ると、空中へ竿を垂れた様だからだ。白桃色の花の先端に、黄色い蕊(しべ)が目立ち、浮き玉にも似ている。
実はこの花、本当に『釣り』をしているのだ。
風に竿を揺らし、ふよふよ漂う蕊は、おびき寄せる為の疑似餌。羽虫がうっかり止まると、開いた花がバクリと閉じ、満足げに下を向く。
嘘の様な話だが、その証拠に、庭へこの花が根付いてから、やぶ蚊やコバエが目に見えて減った。年々株は立派に成長し、アブや蜂も稀になった。
先日、花に耳を近付けたところ、微かにカエルの声がして驚いた。
虫以外も捕る様になったらしい。指先程だった花は、いつの間にか、掌ほどの大きさに育っている。……おや。下の方の花から、太いミミズが。
いや。これはネズミの尻尾か。
釣りと私は呼んでいる。一斉に長く伸びた花柄が、横から見ると、空中へ竿を垂れた様だからだ。白桃色の花の先端に、黄色い蕊(しべ)が目立ち、浮き玉にも似ている。
実はこの花、本当に『釣り』をしているのだ。
風に竿を揺らし、ふよふよ漂う蕊は、おびき寄せる為の疑似餌。羽虫がうっかり止まると、開いた花がバクリと閉じ、満足げに下を向く。
嘘の様な話だが、その証拠に、庭へこの花が根付いてから、やぶ蚊やコバエが目に見えて減った。年々株は立派に成長し、アブや蜂も稀になった。
先日、花に耳を近付けたところ、微かにカエルの声がして驚いた。
虫以外も捕る様になったらしい。指先程だった花は、いつの間にか、掌ほどの大きさに育っている。……おや。下の方の花から、太いミミズが。
いや。これはネズミの尻尾か。
ファンタジー
公開:19/09/21 23:33
※フィクションです。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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