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「おうおう、どうした狐の旦那」
 いつものように狸が食事へ向かっていると、向こうから狐が走ってきた。
 昔から狐と狸は仲悪しと話されてきたが別段そんなことはありはしない。話もすれば、食事だって一緒にすることもある。この二匹も、通っている食事処が一緒な事もあって顔馴染みであった。
「狸の旦那!こいから食事へ行くんかい!?」
「おう」
「駄目だ駄目だ!すぐに帰った方が身のためだぜ!」
 狐は早口に捲し立てると、身をぶるっと総毛立たせて逃げるように走り去っていった。
 その一瞬の嵐に要領を得ない狸は首を傾げながらも空腹には勝てず、とりあえず食事へ向かうことにした。

 しかし、場所へ着くなり狸はその四肢を震わせると一目散に逃げ出してしまった。



 狐狸たちの目指した畑には
『狐うどん、たぬき蕎麦、始めました』
という立て札が立ててあった。
 どうやらあの狐狸たちは文字も読めるらしい。
ファンタジー
公開:19/09/21 20:54
更新:19/09/21 20:59

トウヒ・ゲンカイ

昔から本が好きで、いつか自分も書きたいと思い描きながらも中々完成せずの日々。
とにかく完成させることを第一の目標にして、まずはショートショートに挑戦してみることにしました。
ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。

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