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一日中、右目に不快感があった。家に戻って洗面所の鏡で見てみると、右目のまなじりの辺りにピンク色の糸が貼り付いていた。俺は眼球をチョイチョイと擦って指先に糸を捕らえ、慎重に摘むと、そっと引っ張った……
ズルズルズル
その糸は途切れなかった。俺は俯いて、洗面台に糸を垂らすと、両手で手繰った。始めは恐る恐る。後は、イートヲマキマキイートヲマキマキみたいな調子で。
洗面台に、うず高いとぐろを巻いていく糸は、イカのワタみたいな色に変わってきていた。
「これ、いつまで続くんだろう?」
と思った矢先、後頭部が内側へ引っ張られた。だが、手の勢いは止まらなかった。後頭部の一点がペコンと陥没する感覚に戦慄して、俺はようやく糸から両手を離した。
その途端に、糸はすさまじい勢いで目の中へ引き戻されていった。
なんともいえない爽快感と喪失感の中、俺は再び、右目に糸が入っているような不快感を感じていた。
ズルズルズル
その糸は途切れなかった。俺は俯いて、洗面台に糸を垂らすと、両手で手繰った。始めは恐る恐る。後は、イートヲマキマキイートヲマキマキみたいな調子で。
洗面台に、うず高いとぐろを巻いていく糸は、イカのワタみたいな色に変わってきていた。
「これ、いつまで続くんだろう?」
と思った矢先、後頭部が内側へ引っ張られた。だが、手の勢いは止まらなかった。後頭部の一点がペコンと陥没する感覚に戦慄して、俺はようやく糸から両手を離した。
その途端に、糸はすさまじい勢いで目の中へ引き戻されていった。
なんともいえない爽快感と喪失感の中、俺は再び、右目に糸が入っているような不快感を感じていた。
その他
公開:19/09/21 11:24
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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