野守は見ずや

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まるで、雨の花束だと思った。
両腕を目一杯広げても、抱えきれないくらい。紅い花に、連なった葉の一つ一つに、頭上から枝垂れて降り注ぐ放物線に、私達を足留めした時雨が閉じ込められてる。
合計何リットルだと思う?私が訊いたら、計算してやろうか?真面目に答える。相変わらず夢のない奴。すぐ数字を振り翳すのは、理系の悪い癖よね。だったらどう答えればいいって顔。そんなの自分で考えて。頭も身体も全部追い抜いて、結局主導権は明け渡すのね。
しげしげ眺める顔面に土砂降り。お返しの放水。雨宿りの意味がないくらい、両側から押し合って、もうびしょ濡れで笑って、鼻の頭に花くっ付けて。
透けたブラウスで視線を逸らす。
寒くなっちゃった。貼り付いたスカートで小走りする。上がって乾かせよ。一声で済むのに、片道300mで二の足を踏む。いっそ走って追い掛けて抱きしめてよ。
萩の花は野守草。歌と違って、私は貴方にフラれっぱなし。
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公開:19/09/22 20:49

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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