吸い込まれる

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普段本なんて読まない僕が偶々手に取ったその本はとても面白かった。
僕は時間を忘れ、本を読むことに没頭した。
こういうのを「引き込まれる」なんて表現するけど、この本は「吸い込まれる」という表現が正しい。
何せ、僕は気が付いたら本の中に閉じ込められていた。
僕が読んでいたのは悪魔の本。この本は読んだ人を吸い込み、本にしてしまう恐ろしい本だ。
ああ…こんなことになるんだったら本なんて読まなければよかった…
この時、僕は後悔していた。でも翌日、事態は一変した。
『お前の人生…薄っぺらすぎて本に出来なかった…帰っていいぞ』
本の悪魔が僕を可愛そうに見つめてきた。
「お前に僕の人生の何が分かるって言うんだ!」
激怒する僕に悪魔は言った。
『お前の人生、親が決めたシナリオ通りに進んでいる。そこにお前の意思はない』
それの何が悪い。それは楽な生き方だ。
僕の親も、その親の親も、ずっとそうやって生きてきた。
公開:19/09/18 18:09

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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