『特別な一皿』 老父と息子

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父が病で倒れた。
厳格な父で、陶芸で国宝を作る程の人だった。
だが仕事優先で家庭を省みない人だった。
俺はこの機に復讐をしてやろうと思った。
病床の父に、あんたの大切な皿を沢山割ってやったよ、と言ってやったらさぞ溜飲がさがる気がしたのだ。
父の仕事場に飾られている高く売れそうな皿を俺は手に取る。
そして躊躇なく土間に叩きつけた。
バリィンッ‼パリンッ‼何枚も割った。
そして俺は棚の奥にある箱を見つけた。
中身はなんだか安っぽい皿だ。これも割ってやるか。
手に取ると包み紙が目に入った。数字が書かれていた。
俺は愕然とした。俺の誕生日だった。
箱の中身は他も数字付きだった。学校の入学、卒業の日。成人の日。入社内定の日。結婚式の日……。
俺はそっとその皿を元に戻した。
涙がその上に落ちた。
明日、父の見舞いに行こう。
そして謝って、ありがとうと言おう。
父は陶芸家だ。偉大な、優しい、自慢の父だ。
その他
公開:19/09/17 20:41

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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