蚊柱乱交

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 雨の前の暑い夜に自転車を走らせていて、街灯が照らす三角錐の中に、白い影がぼんやりと揺らめいているのに出くわしました。できうれば、その只中に突っ込んでいくことは避けたかったのですが、その時は、不意に生温い空気のまだらな塊をすり抜けた直後で、虚をつかれていたため、そのまま、その白い影を突っ切ってしまうことになったのです。
 それは、蚊柱というもので、無数の羽虫が灯りに集まって、互いを牽制しつつパートナーを求める一群なのでした。
 そこへ突っ込んだ私の身体は大量の羽虫と衝突し、何割かを体内へ取り込んでしまったのです!
「ああ。この衝突と通過とによって、私を形作っていた幾らかの粒子が羽虫どもに取って替わられ、その反動で、私を形作っていた幾らかの粒子が弾き出されて、蚊柱の一部になってしまった」
 私は、どさくさ紛れに蚊柱内で乱交してしまった気恥ずかしさに顔を伏せて、全力でペダルを漕いだのでした。 
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公開:19/09/17 19:42

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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