セーナの仔犬(4)

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(承前)
「もう、帰ろうか」と僕が言うと、セーナは「はーい!」と返事をして、遊んでいたときの笑顔のまま仔犬たちを抱き、当然のことのように、自分の自転車のカゴに入れた。
僕は、お弁当の容器一式を持った。ふたりでまた真っすぐに伸びた道を走りはじめる。

「セーナはねえ、おばあちゃんにこの仔たちをお願いするけどー、セーナだってちゃんとお世話してあげるんだからねー」
やや勾配のある舗装路を立ちこぎしながら、セーナは僕の方を向いてそう言う。並びの良い歯を見せ、ずっと笑った顔のままだった。
仔犬たちは、自転車のカゴの中で揺られながら、コロコロとじゃれ合っている。

黒い山かげのはるか上に、白く浮かぶ羊雲の一団があった。すっかり傾いた西陽の残照を受け、片側が眩しく輝いている。
それが鳥の群れのように翻り一斉に向きを変えて、羽ばたき飛んでいった。僕は、消えて見えなくなるまで、羊雲を見送った。
(了)
その他
公開:19/09/20 09:27
更新:19/10/02 22:11
仔犬 夢日記

白ねこのため息( あちらこちらにいます )

2019年9月14日から参加いたしました。
しみじみとした後味や不思議な余韻が残る作品を目指しています。
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ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。

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現在、資格取得(英検1級など)の勉強中のため、投稿ペースが落ちていますが、
これからも引き続きご愛顧のほど、何とぞ宜しくお願いいたします。ペコリ。
 

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