バナナな話

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 さて、実験をしよう。
 木の枝にバナナを吊す。踏み台と、棒を地面に転がしておく。
 あとは、この猿がどのような行動をするのかを観察するのだ。
 猿はきょとんとした顔で宙を見上げ、そしてぼんやりした顔で地面を見回した。そして、パッと顔を輝かせる。少なくとも、私の目にはそう見えた。
 猿は喜び勇んでバナナを吊した枝の下に踏み台を置き、そして棒を拾い上げる。あとは、棒でバナナをたたき落とすだけだ。
 猿は棒を高く掲げて降った。
 しかし、バナナは宙にぶら下がったまま。
 だと言うのに、猿が拾い上げたのはバナナ、のようなものだ。黄色くて曲がっている。猿は嬉々としてそれの皮を剥き、ぺろりと平らげてしまった。
 訳が分からないが、とにかく、実験は失敗だ。
 思わず天を仰ぐと、さっきまで輝いていた三日月がどこにもない。
 そうまるで食べられたみたいに。
ファンタジー
公開:19/09/18 22:25

海月漂( にほん )

思いつきを文章にするのが好きです。
怪奇からユーモアまで節操無く書いていきたいです。
少しでも楽しんでいただけますように。

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