幻の池

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 林の中に「幻の池」が現れた。青年団はPRに躍起だったが、敬老会から待ったがかかった。治まらない青年団に敬老会は「池」で説明会を行うと伝えた。深夜2時。参加者は臭い草の汁を全身にすりこみ、肌を露出しない服装をするよう義務付けられた。
 池に集合すると、何かが無数に蠢いている。
「ヘサダニ。猛毒だ」
 青年団は「駆除を!」と騒いだが敬老会は首を振り、地面を指差した。一面に蟻がいた。
「キハムシアリ。ヘサダニを食う。猛毒だ」
 青年団はその場で跳ねた。そこへ猪が現れて蟻を食い始めた。
「蟻を食うと凶暴になる。静かにしてろ」
 うろたえる青年団に、敬老会は「じっとしてろ」の一点張りだ。イノシシは彼らを掠めて池に飛び込んだ。すると池が裏返ったかのような飛沫があがり、イノシシが消えた。
「ヌシが食った」
 そして、呆然としている青年団に敬老会が言った。
「今年は立ち入り禁止だ」
 青年団は沈黙した。
ファンタジー
公開:19/09/15 12:36

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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