鳴響止垂

10
9

長月の黎明に降り出したカナカナは、曙が森へ金紗を纏わす頃には、ミンミンとジリジリに喰われてしまいます。
朝露を吸い尽くし、腹腔から剥がされた発振膜だけが、透明な落葉の様に音も無く舞い積もり、梢や洞や湿り苔に溜まった、カナカナの仮名と混ざり合います。それが地下の根の細胞に浸潤すると、次は道管の内を浮上して行きます。ミンミンとジリジリは表層を刺しますが、管を突き通す針が無いので、昼の間に悠々と頭上を抜けられるのです。

黄昏が再び森を染める頃、ミンミンとジリジリは、ほたりはたり落ち転がり、ばたばたもがきながら、リリやコロリやキチキチになります。あんなに沢山の骸と見えたものが、気付けば姿を消しているのは、鳴く者から奏でる者へと、殻を脱ぎ変えるからです。
葉末で蒸散されたカナカナは、夕露に凝結し降り注ぎます。リリやコロリやキチキチが待ち構え、降る側から齧り砕くので、カナカナは翅一つ残らないのです。
ファンタジー
公開:19/09/15 00:06

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍(電子/紙)を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。

☆SSGと皆様のお陰で生まれた本たち☆

ショートショート・アソート
Ver.0~街角のキセキ(※無料お試し版)
Ver.1~フラワリング・ライフ
Ver.2~机上ファンタジア

詩集
君に伝えたかったんだ。

いつも本当に、ありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容