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今年の自由研究は、新種の朝顔の種の観察だった。

夏休み明け、朝顔は想像以上に多様だった。
咲いた朝顔の素材は、木彫り、セロハン紙等々。
ただ一つ、クラス一乱暴者のケンの朝顔は、繊細な切子細工の瑠璃色の朝顔だった。

皆がケンの朝顔に夢中だったが、育て方を聞いても、面倒くさそうに「てきとー」

ジレンマの中、再び朝顔が咲き始める。
青いレースの朝顔が咲いた子。深紅のビロードの朝顔を咲かせ、「バラみたい」と自慢する子。
私は茫然として、綻び始めた蕾を見ていた。
「汚ねーな、雑巾が咲くんじゃね?」
ケンが言った翌日、雑巾のように黄ばんだ木綿の朝顔が咲いた。

誰もいない教室は静かだ。
強い西日が、ケンの朝顔に差しこみ、瑠璃色の虹を作っている。
種がなければ、作ればいいのではないか。
私は、瑠璃の朝顔を叩きつけた。
キラキラと砕けた硝子を見て、これだけ美しければ、間違えないだろうと思った。
青春
公開:19/09/21 13:00

七下(ななさがり)

旧「はるぽこ」です。
読んでいただき、ありがとうございます。

400字制限の長さと短さの間で、いつも悶えています。
指摘もコメントも、いただけたらすべてを励みにします、大歓迎です。

【優秀賞】
渋谷コンテスト「夜更けのハイビスカス」

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