瑠璃子の手鏡
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祖母から母へ母から私へ受け継がれてきた重い手鏡。久しぶりに箱から取り出した。紅を引き、頬紅をつけてみたくなる。
鏡の中に映し出されるのは、いつもの私ではないみたい。そう、モノクロ写真で見たことのある若かりし日の祖母の顔だ。私と祖母はよく似ている、祖母の若い頃を知っている人たちはみな口をそろえて言ったものだ。そして、その言葉を肯定も否定もせず、静かにほほえんでいた祖母。
「瑠璃子。哲夫さんとお出かけするのでしょう。いつまでお待たせする気」
振り返ると、着物姿の中年女性が眉をつり上げている。哲夫は私の祖父の名、瑠璃子は私の名、祖母の名、私の名。
ぼんやりしていたらダメ、私は今、哲夫さんとお出かけをする準備をしていたのだ。
先日哲夫さんから頂いた手鏡を引き出しにしまい、慌てて腰を上げた。
「瑠璃子」
哲夫さんの声に胸が躍る。私は別の瑠璃子だった気がしたが、その記憶が薄れていく。
鏡の中に映し出されるのは、いつもの私ではないみたい。そう、モノクロ写真で見たことのある若かりし日の祖母の顔だ。私と祖母はよく似ている、祖母の若い頃を知っている人たちはみな口をそろえて言ったものだ。そして、その言葉を肯定も否定もせず、静かにほほえんでいた祖母。
「瑠璃子。哲夫さんとお出かけするのでしょう。いつまでお待たせする気」
振り返ると、着物姿の中年女性が眉をつり上げている。哲夫は私の祖父の名、瑠璃子は私の名、祖母の名、私の名。
ぼんやりしていたらダメ、私は今、哲夫さんとお出かけをする準備をしていたのだ。
先日哲夫さんから頂いた手鏡を引き出しにしまい、慌てて腰を上げた。
「瑠璃子」
哲夫さんの声に胸が躍る。私は別の瑠璃子だった気がしたが、その記憶が薄れていく。
ホラー
公開:19/09/14 22:01
思いつきを文章にするのが好きです。
怪奇からユーモアまで節操無く書いていきたいです。
少しでも楽しんでいただけますように。
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