スパイ・フラワー

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男は女の誕生日に花束を贈った。歳の数だけある、大輪の真っ白な百合。
満面の笑顔で受け取ると、女は帰宅し、花瓶に注意深く活けた。
それから、リビングからも見えるよう、キッチンカウンターに据えた。いつでも好きなときに眺められる。
彼女がテーブルで詩を書くときにも、ソファで手芸をするときにも、クッキーを焼くときにも、いつでも白百合は見つめていた。

その花は、スパイ・フラワーだった。花束にはカメラやマイク、センサーを内蔵した偽装花が巧妙に仕込まれている。
男は、女を敵国が送り込んだ工作員だと睨んでいた。好意があるかのように彼女に近づき、花束を贈ったのだ。
女は密かに大統領暗殺の計画を練り、銃器を組み立て、毒薬を作っている筈だ。
しかし、モニターからは全く見えてこない。何故だ?
男は知らない。百合の花言葉を。
その花は、女の姿を確かに男へ伝えていた。ただし、すべて「純粋無垢」なるものへと変換して…
ミステリー・推理
公開:19/09/14 19:29
更新:19/11/16 23:54
スパイ 工作員 百合 花言葉

白ねこのため息( あちらこちらにいます )

2019年9月14日から参加いたしました。
しみじみとした後味や不思議な余韻が残る作品を目指しています。
どうぞ宜しく…。
ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。

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現在、資格取得(英検1級など)の勉強中のため、投稿ペースが落ちていますが、
これからも引き続きご愛顧のほど、何とぞ宜しくお願いいたします。ペコリ。
 

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