金魚・銀魚・銅魚

今日も江戸の町に金魚売りの威勢のいい声が響き渡る。

「いらっしゃいいらっしゃい！正真正銘活きのいい金魚だよ！
どうだい、お姉さん？一つ買っていかないか？そこの旦那！家族への土産にどうだい？
えっ？これ、本当に金魚かって？馬鹿にすんじゃねぇ！見てろよ！」

金魚売りはそう言って金魚の入った桶の水を飲む。

「どうだ！水を毒に変える銀魚じゃ、こんなこと出来ないぜ！こいつらは正真正銘の金魚だ！あんな安物とはモノが違う！
とか言いながらそれより下の銅魚じゃないかって？そういや巷じゃ銅魚は水の中の細菌を死滅させるって噂があるようだな。
でも残念。銅魚はここにいないぜ。平賀の旦那が全部買い占めたんだ。
なんでも銅魚は『でんき』とやらを通しやすいらしくてな。『えれきてる』とやらに使うんだとよ。
ちなみに銀魚も平賀の旦那が買い占めている。水銀がどうとか言っていたが…銀魚と銅魚を集めるなんて変わり者だよ」