救いの神

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「もうこれ以上生きたくないのだろう?」
見知らぬ女が目の前に現れてそう俺に言った。
「だから私が迎えにきてやった。」
不躾に女は続けた。
たしかに俺
女は見透かすしたような目で断定的な口調で話す。
「お前は死に方を考えて悩んでいる。だから私がお前の望まぬ生を終わらせてやれる。」
「まるで死神だな。」
思わず漏らした俺の言葉に、女は激しく不快感を示した。
「死神とは随分と失礼だな。私はお前の命を奪いにきたわけではない。お前は生きる事に疲れている、だが終わらせ方を決められずに居る。恐れてさえいる。だから私が救ってやろうと言うのだ、むしろ救いの神だ。」
女の言っていたことは的を得ていた。たしかに俺は生きる事に疲れていた。そして終わらせ方を考えていた。だが女を信用はできない。それすら見透かしたように女は言う。
「心配するな。眠ったようにお前は死ぬ。取引をしよう。お前の残りの寿命を寄付してくれ。」
ファンタジー
公開:19/09/16 12:41

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