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表庭で咲き盛りの唐藍(からあい)を手入れしていると、手袋を掠めて、ハバチが一匹花へ止まった。
ファベルジェのエナメルの様な、艶と金属光沢を帯びた藍瑠璃(あいるり)。ブローチにでもしたい出来栄えだった。刺さない事は知っているので、場所を譲り、隣の風蝶草をかまう。呉藍(くれあい)色の唐藍と、藍瑠璃の蜂は、逢瀬を愉しむ風にひとしきり寄り添い、やがて蜂は、煙硝子の翅を広げて発って行った。
ルリチュウレンジ。漢字を当てると、瑠璃鐫花娘子蜂。いかめしくも映り、嫋やかにも思える。
風に袖を振って見送る唐藍は今、黒い種と、色の知れない卵を抱いているのだろうか?それとも、蜂はただ気紛れに訪れただけなのか。花陰を探りたい欲望としばし戦う。
唐藍が雪に埋もれる遥か前に、蜂は命を終えるだろう。けれど、もしも呉藍から藍瑠璃が一斉に羽ばたいたなら、どんなに素晴らしいだろうと思い、来年まで刈り込みはしない事に決めた。
ファベルジェのエナメルの様な、艶と金属光沢を帯びた藍瑠璃(あいるり)。ブローチにでもしたい出来栄えだった。刺さない事は知っているので、場所を譲り、隣の風蝶草をかまう。呉藍(くれあい)色の唐藍と、藍瑠璃の蜂は、逢瀬を愉しむ風にひとしきり寄り添い、やがて蜂は、煙硝子の翅を広げて発って行った。
ルリチュウレンジ。漢字を当てると、瑠璃鐫花娘子蜂。いかめしくも映り、嫋やかにも思える。
風に袖を振って見送る唐藍は今、黒い種と、色の知れない卵を抱いているのだろうか?それとも、蜂はただ気紛れに訪れただけなのか。花陰を探りたい欲望としばし戦う。
唐藍が雪に埋もれる遥か前に、蜂は命を終えるだろう。けれど、もしも呉藍から藍瑠璃が一斉に羽ばたいたなら、どんなに素晴らしいだろうと思い、来年まで刈り込みはしない事に決めた。
ファンタジー
公開:19/09/15 21:51
更新:19/09/16 20:02
更新:19/09/16 20:02
唐藍(からあい):ケイトウ
呉藍(くれあい・くれない)
ピーター・カール・ファベルジェ
追記。もしかしたら、この蜂は
青蜂(せいぼう)の一種かも。
名前違ったらすみません……。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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