仲秋虹月

4
9

床に白い棒が落ちていると思ったのです。拾おうと屈んで、くっきり細く伸びたそれが、レースの切れ間から差し込むものと気付いた時、私はこの驚くべき明るさを、どうして伝えずにいられようかと、つい受話器を上げてしまいました。
通話まで押して、また気付いて終話を押して、そのプツリが酷くやるせなくて。レースを掻き分けるのをやめました。
中秋は一昨日。十六夜は昨日。立待の今日は、目に見えて欠けた円が浮かぶのでしょう。貴方が欠けた私と同じ様に。

窓の外から月の道を歩いて、貴方の部屋へ辿れたらいいのに。ベッドのパイプ格子に似た、細い白を追いながら、貴方が恋しくて仕方ないのです。中秋はなぜ仲秋ではいけないのか。自分のせいと知りながら拗ねてしまう私を、貴方は我がままと笑うでしょうか。

結局迷って、レース越しに見上げた円は朧に丸く、虹の暈を差して澄まし顔。
もう一人占め出来ない貴方を、それでも早く抱き締めたい。
ミステリー・推理
公開:19/09/15 19:59
中秋と仲秋 月暈/Halo 立待月(十七夜)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容