死神

生保の営業マンである僕は、画期的な方法を見つけた。無料で人間ドックに入ってもらい、保険に加入した人にはボーナスを提供するという方法だ。検査した上での加入なので健康なカモ…いや顧客を確保できる。ボーナスといっても金銭ではなく希望を叶えてやるのだ。若返りたいとか寿命を伸ばしたいとか。特に寿命を伸ばせる寿命チケットは好評だ。これがなければすでに鬼籍に入ってしまった人もいただろう。
今日もまた、一人やってきた。
「寿命チケットとかいうのがあるだろう?」
来た来た。病弱そうな男だが、その分、掛け金をふっかけてやろう。
「ご加入いただければご希望のチケットを進呈いたします」
男は申込書に書いていった。
「私の希望はねぇ」
「はい」
急に男の瞳が金色に輝いた。
「お前の命だよ。死は私の仕事だ。邪魔をするな。一緒に来てもらおうか」
申込書の氏名欄には「死神」住所欄には「黄泉の国」と書かれてあった。