峠のお地蔵様
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私は石である。名前はまだない。だが、人間は私のことを「峠のお地蔵様」と呼んでいる。
元々は大きな石だっが、いつしか切り離され、人間から祈りを捧げられ続けるうちに、心が宿ってしまったのだ。
私にはひとつの喜びがある。人間が拝みに来てくれることだ。私には目も耳もないが、人間の心を通じて様々な感情が私の中に流れ込んでくる。
悩み事もあれば願い事もある。単なる近況報告もある。家族や息子を守ってくれと懇願されることもある。
何もしていない、何もできないのに、お礼にくる人間が後を絶たない。だが、本当にお礼をするのは私の方だ。ただの石に過ぎない私に、こうして心を籠めてくれたのだから
人間は偉大だ。お地蔵様よりずっと、ずっと。
今日も私は、偉大な人間を見守るため、峠に立ち続けている。
元々は大きな石だっが、いつしか切り離され、人間から祈りを捧げられ続けるうちに、心が宿ってしまったのだ。
私にはひとつの喜びがある。人間が拝みに来てくれることだ。私には目も耳もないが、人間の心を通じて様々な感情が私の中に流れ込んでくる。
悩み事もあれば願い事もある。単なる近況報告もある。家族や息子を守ってくれと懇願されることもある。
何もしていない、何もできないのに、お礼にくる人間が後を絶たない。だが、本当にお礼をするのは私の方だ。ただの石に過ぎない私に、こうして心を籠めてくれたのだから
人間は偉大だ。お地蔵様よりずっと、ずっと。
今日も私は、偉大な人間を見守るため、峠に立ち続けている。
ファンタジー
公開:19/09/14 06:30
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