月事情の裏側

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 ゴシッゴシッ。
  
「やれスーパームーンだブルームーンだと、最近仕事がきつくなってきた」
「この間のストロベリームーンとかいうやつの時に赤いペンキを塗らされたのは骨が折れたなぁ」
「ああ、赤は青より塗り忘れが目立つからなぁ」
 職人たちは愚痴を小さく溢しながらもテキパキとデッキブラシで月の表面を綺麗に掃除して、そこに艶出しワックスを塗っていく。
「最近棟梁はやたらと張り切ってイベント事を興すが、俺はやっぱり十五夜が一番良いな、楽だし」
「な、頑張るのは月食だけで十分だな」
「しかもスーパームーンもブルームーンもストロベリームーンも、結局肉眼じゃ確認しにくいらしいから写真をスマホで見てるらしいし」
「なんだそれ。結局目線は下じゃねぇか」
「棟梁の目線は常に上だがな」
「違いねぇ」

 綺麗に磨き上げた月の表面をさらりと撫でると、職人二人は別の場所を磨きに移動していった。
ファンタジー
公開:19/09/13 21:31
更新:19/09/13 21:34

トウヒ・ゲンカイ

昔から本が好きで、いつか自分も書きたいと思い描きながらも中々完成せずの日々。
とにかく完成させることを第一の目標にして、まずはショートショートに挑戦してみることにしました。
ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。

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