4
6

「磨け磨け!今夜は十五夜だぞ!」
 ばたばたと慌ただしく職人たちが走り回る。額に光る汗を拭いながら頑張る部下たちの尻を更に叩くように棟梁は急かした。
「これはこれは、精が出ますな」
「旦那!何せ今夜は十五夜ですからね」
「最近の人たちはやれスマホだなんだと下を向いてばかり。近頃月なぞちっとも見上げなくなった。昔は夜になると皆さん月明かりを頼ってくれたというのに。今はこうしてイベントで月を思い出して貰うのが精一杯か」
「仕方ありませんよ、時代の流れというやつですな。そいつに負けねぇように我々もこうして頑張らねぇといけやせん」
 十五夜だけじゃ一年に一回しか興味を持って貰えないからと、昨今ではスーパームーンにブルームーン、ストロベリームーン等のイベントを起こした。それが功を奏して月への感心は低迷期から右肩上がりになってきた。
「しっかりと磨き上げて、今夜は立派な月夜にしてみせますよ!」 
ファンタジー
公開:19/09/13 21:01
更新:19/09/13 21:34

トウヒ・ゲンカイ

昔から本が好きで、いつか自分も書きたいと思い描きながらも中々完成せずの日々。
とにかく完成させることを第一の目標にして、まずはショートショートに挑戦してみることにしました。
ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容