枕の男

　男の会社が研究開発商品化した「形状記憶枕」は、特殊なパウダービーズが詰まった本体と、人肌風のカバー。さらに、その中間の「形状記憶ラップ」からなる特許の塊である。
　使い方は簡単で、
①枕にうつ伏せに寝て顔の凹型を残す。
②形状記憶ラップを外し、裏返して再装着する。
③凸型が再現する。
　という３ステップだ。
　記憶形状は、女性が臀部に数時間敷いていればリセットできる。
　この製品が恋人同士やファミリー層、一部のストーカーから支持されてヒットすると、意外なところからコラボの打診があった。「大人の玩具」業界だ。
「人体のコピー道具として確実なニーズが見込まれる」
　と、破格の条件が示されたのだが、男は即座に断った。
　部外秘事項として、記憶形状リセット中の枕には男の顔が浮き出る仕様にしてあったのだ。

「そんないい話をなんで断ったのよ！」
　男は、今日も妻の尻に敷かれながら快感に震えている。