月との遭遇

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秋の夜長、郊外にある自宅の屋上で天体観測を楽しんでいた。冷涼とした夜空は澄んでおり、秋の大四辺形など星々も綺麗に見える。
すると、流れ星のような物体がピカピカ点滅しながら私のいる屋上に近づき、不時着した。
あまり大きくないその物体の中から、ウサギにそっくりの地球外生物が出てきた。
「やはり、あなたには我々が見えるようですね」
テレパシーで流暢な日本語で話しかけてきた。
「地球では、昔から中秋の名月にウサギが餅つきをすると伝えられていますが、あれは我々が月面で秋祭り用の餅をついているのです。
本来は、地球人の目で我々が見えないはずですが、たまにあなたのようにはっきり見える場合があるようです。
そういうあなたにお願いがあるのですが、これから地球人が行おうとしている月旅行をやめさせてほしい。静かに住んでいる我々としては大迷惑なのです」
私は、この月との遭遇によって思わぬ重責を担うこととなった。
ファンタジー
公開:19/09/13 08:43
9月13日は中秋の名月

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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