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『やり貝』は既に売り切れていた。おそらく俺の前に並んでいた遠藤だ。残っている品に欲しい貝は無かった。仕方なく歓楽貝を手にして、盛りのついた後輩にくれてやった。
うちの会社には四半期に一度、購買ならぬ購貝がやってくる。どれもレアな貝ばかりで、しかも数が少ない。営業成績の良かった順に購入する権利が与えられるのだ。
同期の遠藤は俺のライバル。今回も少しの差で負けてしまった。あのやり貝さえ手に入れられたら絶対に負けないのに。
次の四半期、俺はやり貝を手にいれるため必死になった。あらゆる営業努力を惜しまず、自分の力を出しきった。結果、初めて遠藤に勝利した。

購貝の日。人気のナイス貝、クール貝、タフ貝は早々に売り切れ、いよいよ俺の番。
あった、やり貝!
俺は伸ばした手をピタリと止めて、この三ヶ月の充実した日々を思い出した。

これを手にしてはいけない。
やりがいを見つけた俺に、やり貝はもう必要ない!
ファンタジー
公開:19/09/10 10:15
更新:19/09/10 15:56
スクー 目の前で売り切れたやりがい

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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