遠隔ブラック企業診断

「ご覧ください。こちらが御社の本社ビルのCT画像です。組織が複雑でしたので、同時にMRIも行っています。こちらを弊社の専門医が臨床に即した質の高い読影を行い、その後、複数の医師によるカンファレンスを実施して、ようやく長時間労働やハラスメント、見つけにくいサービス残業の原因となっている御社の病巣を特定しました」
やはり社長の息子、専務の直樹さんか…。
診断書には、社長に隠れて横領を繰り返し、総務課の愛人に貢いでいることまで書かれていた。
「投薬による治療もありますが副作用が伴いますので、外科手術で病巣のみ取り除いてはいかがでしょうか」
「ぜひお願いします」
では早速、と医師は拡大鏡を装着すると、タブレットの画面に鉗子を差し込んだ。
「いました、いました」
今度は白い棒のような器具を画面に差し込んだ。
「では、レーザーで病巣を除去しまーす」

ジュッ…

タブレットから何かが焼ける音がした。