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秋から冬へ移ろう、北の境。
土盛りの粗末な塚に、薬猟師は帝に授かった形見を埋めた。
子護りの勾玉。次の生に幸あれと願って。薬猟師が一生遊び暮らせる値に違いないが、任を果たした褒賞で、家族に過ぎる程の銭も頂いた。欲をかかず、あるべき場所へ送るのが筋である。
「死人に譲るなら、吾にくれてもよいものを」
隣りの長身が、まんざら皮肉でもなく笑った。
「空の塚では有難みがない。形代の一つも葬らねば」
世と皇統の為、我が子を鬼に仕立てた母である。今は死人と納得しても、いつまた手を伸ばさぬとも限らぬ。証は残さぬ方が安全であろう。
「やれやれ、ようやく全て片付いた」
土を払って見返ると、かちりと眼が合う。
「もう戻るのか?」
「じき雪が降る」
「道中降るか知れぬ。……春まで待たぬか?」
「春までは嫌じゃ」
近付いた手がぴたりと止まる。
「妻問いならば、生涯共にと言うのじゃ」
少し空いて、ぴたりと重なった。
土盛りの粗末な塚に、薬猟師は帝に授かった形見を埋めた。
子護りの勾玉。次の生に幸あれと願って。薬猟師が一生遊び暮らせる値に違いないが、任を果たした褒賞で、家族に過ぎる程の銭も頂いた。欲をかかず、あるべき場所へ送るのが筋である。
「死人に譲るなら、吾にくれてもよいものを」
隣りの長身が、まんざら皮肉でもなく笑った。
「空の塚では有難みがない。形代の一つも葬らねば」
世と皇統の為、我が子を鬼に仕立てた母である。今は死人と納得しても、いつまた手を伸ばさぬとも限らぬ。証は残さぬ方が安全であろう。
「やれやれ、ようやく全て片付いた」
土を払って見返ると、かちりと眼が合う。
「もう戻るのか?」
「じき雪が降る」
「道中降るか知れぬ。……春まで待たぬか?」
「春までは嫌じゃ」
近付いた手がぴたりと止まる。
「妻問いならば、生涯共にと言うのじゃ」
少し空いて、ぴたりと重なった。
ミステリー・推理
公開:19/09/12 04:00
更新:19/09/20 19:27
更新:19/09/20 19:27
原案:吾亦紅(われもこう)
白雪姫、和風アレンジ
ご観覧ありがとうございました。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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