吾亦紅(五)

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「あれは過ちじゃ」
地楡の髪を撫でながら、帝はぽつりと漏らした。
世迷言と否定し、薬猟師を始末する事も出来たものを。泣くでなく、責めるでなく、自ら触れを出して殺そうとした、我が子の形見に語る様に。
「朕は先の帝の斎宮であった。国家鎮護の為、都を離れ、北の宮へ赴いた。斎宮は終生独りを通し、ただただ祈り願い、身を慎んで老いる。それが淋しかった。淋しくて淋しくて。ある時宮を抜け出した」

山野に迷い、谷底で力尽きた。
草を採りに来た、土地の民と思しき若者が、家へ連れ帰り介抱してくれた。
「紅い髪と雪白の肌。都の者とはまるで違った。物識りの男で、地楡の話もそこで聞いた。恐ろしいとは思わなんだ。朕は宮へ帰る気がなかった。七日共にあり、……八日目、宮の守人に連れ戻された。男は斬られ、家は焼かれた。朕の為に罪もない命が消された。過ちとしか呼べぬ」
程なく、都より先帝崩御の報が届き、斎宮は胎の命を知った。
ミステリー・推理
公開:19/09/12 01:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
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