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次の間に控えた随人が駆け付け、薬猟師を囲む。剣の抜く音と鈍い光。
「これは偽物ぞ。地楡の血ではない」
やはり露見した。元より浅知恵――否、そうであればこそ。
「ご賢察にございます。そしていま一つ」
薬猟師は束ねた髪を解いた。帝の御前には寸鉄も許されぬ。人払いの上、帳もなしに対面叶うとは思わなかったが、着物も体も念入りに検められた。
解いた紐を、玉座に向けて放る。
「こちらが真の証。地楡の遺髪にございます」
紐に編んだ暗紅の髪。
――ぴしり。再び杓が鳴る。
もう一度。随人達が剣を収め、退出する。
「まことに、遺髪か」
細い指が髪を取り上げた。
「その場で切り、私に託した後、喉を突きました」
『帝が花の地楡を憶えておいでなら、これで伝わる』
薬猟師の知る由もない、雲の上におわします方の、顔。
『吾は死んだ。故に貴方を脅かしはせぬと』
「母上にお伝え申し上げよと、最期に皇子は仰せでした」
「これは偽物ぞ。地楡の血ではない」
やはり露見した。元より浅知恵――否、そうであればこそ。
「ご賢察にございます。そしていま一つ」
薬猟師は束ねた髪を解いた。帝の御前には寸鉄も許されぬ。人払いの上、帳もなしに対面叶うとは思わなかったが、着物も体も念入りに検められた。
解いた紐を、玉座に向けて放る。
「こちらが真の証。地楡の遺髪にございます」
紐に編んだ暗紅の髪。
――ぴしり。再び杓が鳴る。
もう一度。随人達が剣を収め、退出する。
「まことに、遺髪か」
細い指が髪を取り上げた。
「その場で切り、私に託した後、喉を突きました」
『帝が花の地楡を憶えておいでなら、これで伝わる』
薬猟師の知る由もない、雲の上におわします方の、顔。
『吾は死んだ。故に貴方を脅かしはせぬと』
「母上にお伝え申し上げよと、最期に皇子は仰せでした」
ミステリー・推理
公開:19/09/12 00:00
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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