吾亦紅(四)

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次の間に控えた随人が駆け付け、薬猟師を囲む。剣の抜く音と鈍い光。
「これは偽物ぞ。地楡の血ではない」
やはり露見した。元より浅知恵――否、そうであればこそ。
「ご賢察にございます。そしていま一つ」
薬猟師は束ねた髪を解いた。帝の御前には寸鉄も許されぬ。人払いの上、帳もなしに対面叶うとは思わなかったが、着物も体も念入りに検められた。
解いた紐を、玉座に向けて放る。
「こちらが真の証。地楡の遺髪にございます」
紐に編んだ暗紅の髪。

――ぴしり。再び杓が鳴る。
もう一度。随人達が剣を収め、退出する。

「まことに、遺髪か」
細い指が髪を取り上げた。
「その場で切り、私に託した後、喉を突きました」

『帝が花の地楡を憶えておいでなら、これで伝わる』
薬猟師の知る由もない、雲の上におわします方の、顔。
『吾は死んだ。故に貴方を脅かしはせぬと』

「母上にお伝え申し上げよと、最期に皇子は仰せでした」
ミステリー・推理
公開:19/09/12 00:00

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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