吾亦紅(三)

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『ここから少し下った谷間に、地楡の名の元になった、血赤の花の薬草がある。花を乾かし、粉に挽いて持って行け。血止めや火傷に良く効く』
『花と血を見誤るものか。帝を謀った咎で、首を刎ねられて終いじゃ』
『空手で戻っても、結果は変わるまい。試す価値はある』

地楡の言を、信ずるに足ると思ったわけではない。だが、形ばかりでも帝の印状を下され、旅の掛かりを頂いて都を発った。帰らねば追手が放たれ、地楡を仕留めて帰っても、あるいは口封じに消されるのかも知れぬ。相手が生身の人であると、帝は御承知で触れを出されたのではないか。元より目的は薬でなく、地楡の命にこそあったのでは。薬猟師は今、そんな気がしていた。
目前に、帝その人と相対しながら。

「これが万傷の薬、地楡の血とな?」
「生き胆より絞った血を、乾かして粉に挽いたものにございます」
紙包みを開き、飲み下す。
「不味い」

――ぴしり。杓が鋭く鳴った。
ミステリー・推理
公開:19/09/11 23:30

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
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