吾亦紅(一)

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「触れてはならぬ、薬猟師(やくりょうし)」
瀕死の深手と見えぬ程、地楡(ちゆ)の声には揶揄う響きがあった。
「吾は血を吸う鬼。都ではそう謂うのだろう?」
如何にも、薬猟師はその様に聞いていた。典薬府の下官である薬猟師は、帝の御為、国中を歩いて秘薬霊薬の類を狩る。地楡は人の血を啜る鬼であり、またその血は万傷を癒す薬であると。駆け出しの童に余る獲物、けれど狩る事が出来れば、今後の栄達も、貧しい家族の口を糊するに十分な富も手に入る。
「まことは違うとでも言うか、鬼め」
居丈高に吐き捨てながら、弓につがえた二の矢を躊躇した。一の矢は地楡の腹を射抜き、後は仕留めるだけというのに。
「まつろわぬ輩は、一括りに鬼と排す。さて、いずれが鬼やら。……吾の血も、亦た紅きものを」
くく、と低く笑い、地楡は草むらに長身を投げた。
薬猟師と幾らも違わぬ青年の、蒼い面がことりと垂れた。暗紅の髪がばさりと乱れ掛かった。
ミステリー・推理
公開:19/09/11 23:00
吾亦紅(われもこう) 中国名及び生薬名:地楡(ちゆ) 学名:Sanguisorba ラテン語『血を吸う』に由来。 血止めや火傷などの薬です。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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