目の前で売り切れたやりがい

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おれは仕事を終え、アルバイトセンターにやってきた。アルバイトを買うためだ。

A Iシステムがマイナンバーを認識すると、ゲートが開いた。おれは「レアバイト」の受付前に向かって走った。レアバイトとは有料バイトで、バイトの権利を買い取るもの。アルバイトの向こうにある価値を買うのだ。例えばアイドルの裏方の仕事なら、アイドルに会うことができる。そこに価値感があり、やりがいのあるアルバイトというわけだ。
AIが若者を優先したらしく、最後尾だった。

「どうだった?父さん」
息子がスマホを見ながら聞いた。
「今日はアイドル歌手『沢村美月』の裏方のバイトだったよ」
「でも、目の前で売り切れた?」
「——よくわかったな」
「いい歳して、やめなよ」
「やめるわけにはいかないんだ」

やりがいのあるアルバイトなら、きっと生きがいが見つかるだろう。
今度こそ、買い取ってやる。

息子をニートから救い出すために。
その他
公開:19/09/11 18:04
スクー 目の前で売り切れたやりがい

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
最近はスクーのお題からの作品を楽しく書かせていただいてます。お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞歴】
「渋谷シティ」渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。

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