台風前夜の揚羽蝶

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 翌朝は台風の予報でした。
 店の看板を片付けようと扉を開くと、湿った熱風が吹き込んできました。看板を引きずっていると、足元に一匹の揚羽蝶を見つけました。ゆっくりと翅を上下させ続ける揚羽蝶。
 私はしばらく蝶を眺め、そっと扉を閉めました。
 翌朝は、赤みを帯びた陽光の溢れる青空の下、爽やかな秋の大気が静かでした。私は上機嫌で店へと自転車を走らせました。途中、三匹の揚羽蝶が翅をゆっくりと上下させて花から花へと高く低く舞っていました。私は昨夜の揚羽蝶を思い出しました。
 蝶は同じところに倒れていました。そっと手を伸ばすと、蝶はふわりと翅を上下させ、それきり動かなくなりました。
 その直後、横殴りの雨と風とが吹き付けて、蝶を粉々に吹き飛ばしました。顔を上げると、前の道路は濁った川のようになっていました。
 1時間後。マスターが店にやってきて、
「この暴風雨の中、よく来られたね」
 と言いました。
ファンタジー
公開:19/09/08 10:19
更新:19/09/09 08:54
宇祖田都子の話 胡蝶の夢

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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