八百比丘尼の子孫

人魚の肉を食べて不老長寿を得た娘、八百比丘尼は実在する。
実際そこまで伝説的でもないが、うちの家系がそれだ。ただし人魚を食べたわけではなく、遺伝性の障害。言うなれば長寿という病なのだ。
研究機関は『先天性免疫万全症候群（ＣＩＳＳ）』と名付けた。通常、後天的に獲得する免疫の記憶を、遺伝情報として引き継いで生まれる。ご先祖様が得た免疫なら、どんな病原だろうと対処出来るという事だ。この情報はＸ染色体に蓄積され、ＸＸ型でなければ十分に機能しない。従って、女のみ発現する伴性遺伝である。
異物を速やかに排除し、老廃物の浄化作用も高い為、体内環境は最適に保たれる。寿命は平均より長く１５０～２００歳。老化速度も比例して遅い。
この特性を一般に活用すべく、現在も密かに研究開発が行われているが、男女間の寿命格差が助長される事、抗体の拒絶反応により、移植生存率が極めて低い事などから、実用化の目処は立っていない。