幸せな日

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清楚な香りが風と遊ぶ。初夏の夜を思い出す。
幼き私の誕生日、帰宅するはずの母は帰ってこない。狭い部屋で一人、クレヨンで描いたケーキの蝋燭を消した。
突然、誰かがドアを叩いた。「開けて」綺麗な声だった。恐る恐る開けると、白いワンピースを着た少女が立っていた。
「誰?」
「言えない…」そう言って私の手を引いた。「やめて」少女の手を払った。「今日は、あなたの誕生日でしょ?」握られた手は、温かい。不思議な感覚に包まれ、「連れて行って」と自然に出た。少女は微笑んだ。
公園に着き、生垣に咲いた小さい純白の花を摘んで、髪飾りにしてくれた。「これは、アベリアよ」
「たくさん、摘んで大丈夫?」
「大丈夫。私の欠片だから…」
少女は、両手いっぱいにアベリアを抱え夜空に投げた。月に照らされたアベリアたちは優しく輝き、公園中に降り注いだ。「見守っているよ」謙虚な香りと共に少女は消えてしまった。
幸せだったよ。
ファンタジー
公開:19/09/08 00:44

琴音

人間のキラキラとしたところ、弱さ、愚かさ、醜さ、温かさ、愛おしさ、優しさ、面白さ…

人間とは何かを追求して書きたいと思います。

稚拙な文章で読みにくいと思いますが、読んでいただけると、とても嬉しいです。

のろのろ投稿です。。。
 

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