真夏の夜の現実

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数年前のある真夏の夜。

「おわぁっ!!」
信じられない生き物が寝室のカーテンに貼り付いていた。

「なんで部屋の中にいるんだよ・・」

その黒い刺客は微動だにせず、泣きもせず、ただじっとしていた。

私は、その刺客が外へ出られるよう窓を全開にした。
ゼッタイニサワリタクナイ。

「さあ、出口は作ったぞ。いつでもお行き」
そう願いながら私はそっと目を閉じた。

翌朝。「・・・まだいる」

一向に動く気配がない。
どうしよう。胃が痛い。

仕方なく私は逃がすことを決断した。しかし直接は触りたくない。

考えぬいた結果、タオルを手に巻き付けて逃がすことにした。

ずっと静かだったから、ちょっと触っても問題ないだろうと掴んだ瞬間・・・。


『ミミミミミーン!!』

「ぎゃーー!!」

私は急いで窓からリリースした。奴はどこかへ飛んで行った。

忘れたいセミ。だけど一生忘れられない。そんなセミ。
ホラー
公開:19/09/07 23:19
スクー 忘れたいセミ

のぐちょ

Schooの生放送に、ほぼ毎日参加しています。
文章からグラレコ、マインドマップまで、学生に戻った気分で1から学び直しています。
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