生老病死の湯

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「はぁ~極楽極楽」
温泉研究家の孫が発明した『生き返りの湯』が、大病で死にかけの老躯に染みて心地よい。しゅわしゅわと泡の音がする。
「この泡が健康に良いのかい?」
「いや。シワの間に特製の『ミクロな湯の成分』が入り込むから、泡が立つんだ」
「あらホント。シワが伸びて……ん? 声変わってない?」
「言葉遣いも若返ってるね」と笑う孫。
泡立つ水面を見た。霞んでいたはずの視界に鮮明に飛び込んできたのは、シミだらけの肌と総白髪、ではなく雪肌と黒髪だった。血色だけでなく若さも取り戻していた!
胸もスルメの干物から、在りし日の豊かな……って、縮んでいく?
胸だけじゃない。腕、脚、全身が!
「ちょっと! なんなのこれ!」
「だから、しわの間に小さい『ゆ』が入るから、しゅわしゅわに……」
ダジャレかよ!――と叫んだつもりが、「あじゃじゃじゃ、ばぶぅ」それから「おぎゃあ」
「極楽というより、輪廻転生だね」
その他
公開:19/09/07 15:55
更新:19/09/11 14:31

畑のお肉屋

月の音色リスナー
エブリスタでも同じ名前で、ショートショートよりかはちょっと長めのを書いてます → https://estar.jp/users/474388634

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