虫の居所

2
7

気が付くと外は雨で、うるさかった虫の声が止んでた。
部屋の中、ぱちんと音が跳ねる。
雨宿りか。追うの面倒だし、じき寝るし放っとく。
虫だって雨は嫌だよな。翅が濡れると音が錆びるんだっけ。
『嘘だぁ。そんなん外で生きてけないよ』
『ほんとほんと。聴き比べりゃ判んだよ』
――コオロギ。引っ越し以降、音沙汰ない。
『興梠。勝手に虫扱いすんな』
『悪いムシも、虫でしょ?』
どうせ別種だなんて、冗談でも言わなきゃ良かった。

ぱち。また跳ねた。
人が逸らそうとしてんのに、お邪魔虫め。
ぱちん!
「安眠妨害すんなら、外出すぞ」

黙った。
虫の方が気が利く。興梠の馬鹿。

ぱちっ!
「だから、邪魔……」


――今。
外で音した?
「鈴、起きてっか?」
「寝てる。夜中だよ」
「わり。あっち昼なんで……って、まさかの締め出し?」
結局安眠妨害だけど、この際許す。
コオロギと一緒に、癪の虫も黙っちゃった。
恋愛
公開:19/09/09 03:29
興梠(こおろぎ・こうろぎ 他) ※実在苗字です。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容