虫の居所

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気が付くと外は雨で、うるさかった虫の声が止んでた。
部屋の中、ぱちんと音が跳ねる。
雨宿りか。追うの面倒だし、じき寝るし放っとく。
虫だって雨は嫌だよな。翅が濡れると音が錆びるんだっけ。
『嘘だぁ。そんなん外で生きてけないよ』
『ほんとほんと。聴き比べりゃ判んだよ』
――コオロギ。引っ越し以降、音沙汰ない。
『興梠。勝手に虫扱いすんな』
『悪いムシも、虫でしょ?』
どうせ別種だなんて、冗談でも言わなきゃ良かった。

ぱち。また跳ねた。
人が逸らそうとしてんのに、お邪魔虫め。
ぱちん!
「安眠妨害すんなら、外出すぞ」

黙った。
虫の方が気が利く。興梠の馬鹿。

ぱちっ!
「だから、邪魔……」


――今。
外で音した?
「鈴、起きてっか?」
「寝てる。夜中だよ」
「わり。あっち昼なんで……って、まさかの締め出し?」
結局安眠妨害だけど、この際許す。
コオロギと一緒に、癪の虫も黙っちゃった。
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公開:19/09/09 03:29
興梠(こおろぎ・こうろぎ 他) ※実在苗字です。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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