吸い込まれる

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「ここは…どこだ?」
僕はさっきまで彼女と一緒にいた。
彼女といい雰囲気になり、キスしたところまでは覚えている。
それから…何でここにいる?
周りは真っ暗で何も見えない。生暖かく、沼のようなその場所から一刻も早く抜け出したい。
「おーい、大丈夫かー?」
ライトが僕を照らした。男が紐を伝ってするすると降りてくる。
「助けに来た。もう大丈夫だ」
「あの、ここはどこですか?」
「ここかい?ここは彼女の胃の中さ。彼女、キスする際に息吸うもんだから、たまにこうして吸い込まれる奴がいるんだよ。俺はその救助要員さ」
僕は男に連れられ、彼女の鼻まで連れてこられた。口だとまた飲み込まれてしまう恐れがあるらしい。
「さ、早く帰るんだ」
「貴方はどうするんですか?」
僕の問いに男は首を振る。
「俺はもう、彼女の瞳に吸い込まれている。この紐、彼女の視神経だ。俺はもうここから出られない」
僕は一目散に逃げだした。
公開:19/09/08 18:25

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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