ミライの副産物

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近頃、妻の料理の味が薄く感じて仕方ない。
「昔から一緒。貴方が年取ったの」
むろん妻が正しい。薄く感じるのは、私の舌が鈍ったからで、薄味の方が健康に良いのも承知だ。しかしこの味気なさを何とか出来ないかと思っていたら、掛かり付けの医者に画期的な方法を紹介された。
「ミライサイセイですか?」
「味蕾。舌にある味のセンサーを活性化し、感度を上げます。簡単な手術で、若い頃の味覚が蘇りますよ」
刺激物や加齢によって衰えた味蕾を再生すれば、味に敏感になるので、薄味でも満足出来、成人病の予防・改善にも繋がる。善は急げと、早速施術してもらった。
「感度はどうされますか?」
「一番高くして下さい」

手術は無事成功した。
結果、私は妻の料理が食べられなくなった。
妻だけではない。食べ物一切、味が濃過ぎて受け付けないのだ。自分の唾液にも味を感じ、水道水の含有ミネラルすら耐えられず、栄養摂取を点滴に頼っている。
ホラー
公開:19/09/04 23:57
更新:19/09/05 00:00
本当だったら怖い仮定の医学 味覚過敏

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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