船虫英一郎事件簿

13
16

船虫英一郎は、犯人を断崖絶壁に追い詰めた。目前は海、逃げ場はない。

「お前がイニシャルGだったのか」
犯人は英一郎の幼虫馴染だった。
「Gを騙り、ゴキ彩芽を殺めたんだな? なぜだ!」
『丘で見かけて一目惚れだった。でも彩芽は昆虫類で俺は甲殻類のフナムシ。分類違いだ。Gを装って近付き、岩場の海水風呂に誘った。だが、習性でいつものように脚から海水を吸い上げ肛門から飲んでしまったのさ…』
(やだ、まさか海のGなの? 丘Gのふりをして私を騙したってわけ?)
(違う、俺は…)
(ふん!丘Gなら、空を飛んでみなさいよ!ほら!その崖から!)

『カッときて思わず彩芽を…』
「彼女の足は何本だった?」
『10本だ』
「触角は?」
『4本』
「彼女は丸まって発見された」
『えっ?』
「ゴキ彩芽はGじゃなかったんだ。彼女は同じ甲殻類だ」
『まさか…』

「そうダンゴムシだ」
彼はガクリと触角を垂らした。
その他
公開:19/09/04 20:25
虫シリーズ フナムシ

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容