死神の、それだけの話

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育児放棄で死にそうなガキが俺を見上げる。俺は死神。今日はこのガキの魂を回収しにやって来た。
ガキの親と言えば、隣の部屋で酒を飲んでは大騒ぎ。いいご身分だな。
俺は鎌を振り上げた。ガキが恐る恐る俺の襤褸を掴んできた。その細腕では抵抗にもならない。可愛そうに…すぐに楽にしてやるからな。
ガキの手がかくんっ!と落ちた。な、なんて力だー。
俺は鎌を誤ってフルスイングし、隣の部屋にぶん投げ込んでしまった。
死神の鎌に物理殺傷能力はない。故に刺さったところで刺殺にはならない。
俺は隣の部屋を覗き見た。俺が投げた鎌は運悪く…運悪く!ガキの両親に突き刺さり、二人は脳卒中と心筋梗塞を起こし死んでいた。
またやってしまったー。俺は溜息を吐くと懐から始末書を取り出し、そこに両親の名を書いた。
そして、両親の残りの寿命を今にも死にそうなガキに移し替えた。
これは俺が死を手離し、ガキは生を掴んだ。それだけの話さ。
ホラー
公開:19/09/04 18:59

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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