冷たい仕打ち

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小兵衛は老舗問屋の跡取り。だが、帳場にはとんと寄り付かず、もっぱら金魚の世話と交配に明け暮れている。

「三色出目金と和蘭陀獅子頭を掛け合わせると東錦。
東錦に蘭鋳を掛けると、ほれ、江戸錦。
いつか、この手で三国一の金魚を誕生させるのじゃ。」
氷々と言って、店の金子をこっそり持ち出しては金魚や水回り品につぎ込むわ、丁稚の清松まで、引き込むわ。
内儀が物申そうにも、小兵衛の周りにはあっちでぶくぶく、こっちでぶくぶく金魚の水槽が幾重にも立ち並び、泡を吹いて退散するしかない。

とうとう、大旦那も堪忍ならず、言い渡した。
「お前にはアイスぉが尽きた。店は妹のさよに婿をとって、継がせる。
おい、こいつを蔵に入れてしまえ、冷や飯以外運ぶでないぞ。」

水槽の金魚はただ花弁のようなフンをたなびかせていた。
その他
公開:19/09/04 19:00
更新:19/09/13 05:29
スク― 金魚クーラー

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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