声なき悲鳴検知システム

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「汎用型声なき悲鳴検知システム」の完成披露会見のステージに、満面の笑みをたたえて社長が登壇した。
「DV被害を受けても助けを求めることのできない子供たちを救うことができないだろうか? わが社の開発部に、私はそう訴えかけました。声なき悲鳴を検知する汎用システムを、スマートスピーカーや、スマホや、スマート家電に組み込むことで、関係各所へ自動的に通報できれば、子供たちを救えるはずだな。と。
 使命感に燃えた社員は昼夜を分かたず、寝る間も惜しんで研究開発にいそしみ、私が指定した1年半で実用化にこぎつけたのです! プロジェクト副主任補佐の藤堂。製品をこちらへ」
 藤堂は空ろな目でスマートスピーカーを運び込んでスイッチをいれた。
「藤堂、説明を。皆様、ここには声なき悲鳴を上げる者はおりませんので、藤堂の方から……」
 と、そのとき会場の扉がバンと開いた。
「通報を受けて参りました。労働基準監督署です」
SF
公開:19/09/04 17:47
更新:19/09/04 21:00

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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