人間ドックのボーナス

「人間ドックの結果が良ければ、社長から健康ボーナスが出るらしいわよ」
デパートで居合わせた、夫の同僚の奥さんから聞いた話だ。

私は耳を疑った。夫からは何も聞いていなかったからだ。おそらく、社長の懐から出るもので、給料明細には載らないのだろう。

夫の書斎から人間ドックの診断書を見つけた。異常はない。ボーナスは獲得している。

「栄子、久しぶりに温泉に行かないか」
「あら、いいわねぇ。行くわ」
それは、夫の後ろめたい気持ちが、そうさせたのであろう。あのボーナスではない。あの、愛人に決まっている。

やって来たのは、近場の安い温泉旅館だった。ここで安い罪滅ぼしをして、ボーナスはあの女に流れるのだろう。

「うっ。……あ〜極楽極楽」
「気持ちいいわね。あなた……あなた！」

夫は、そのまま極楽へ旅立った。

夫から、ボーナスを受け取った。
人間ドックのボーナスと、毎月投資していた保険金からだ。